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第7回 Point2 評価制度の見える化-評価と報酬の基準を明示-
評価制度の見える化とは、絶対評価を採用して、社員に評価・報酬の基準を明示することです。分かりやすくいうと、評価・報酬の基準を一覧表にして、社員にはっきりと示すことです。
評価と報酬の基準を明示
号俸であれば、スタッフは基本給2,500円刻みで、1号俸(基本給14万円)~45号俸(基本給25万円)、課長は基本給5,000円刻みで、1号俸(基本給17万円)~47号俸(基本給40万円)、部長は基本給1万円刻みで、1号俸(基本給19万円)~42号俸(基本給60万円)といった一覧表を示します。
評価点と評価ランクは、私が推奨する「10段階評価」によるところの86点以上が8、76~85点が6、71~75点が4、66~70点が3、61~65点が2、56~60点が1、51~55点が0、46~50点がマイナス1、36~45点がマイナス2、35点以下がマイナス4で、評価ランクの数字が号俸のアップもしくはダウンに反映されるという基準を示します。
10段階評価…あしたのチーム独自の給与査定の評価点。多くの企業は5段階評価で、100点満点の割り振りをした場合に15点差も同じ評価対象になり、マイナスがない。これに対し、10段階評価は評価点のピッチが5点であり、1点1点に評価の重みが出る。加えてマイナス査定もあり。
これらを基に、あなたの評価点は何点だったので、基本給はいくらになりますと、デジタルに示すのです。
一例を挙げれば、スタッフで現在1号俸(基本給14万円)の人の場合、評価点が62点であれば、評価ランクが2なので、2号俸アップして3号俸(基本給14万5,000円)となります。
これと同じように、昇格・賞与についても評価点と連動した基準を設け、社員に明示する必要があります。また、評価を本人にフィードバックする際、最終的な評価点だけでなく、行動目標のどの項目は何点という素点や改善要望点・チャレンジ目標・アドバイスなども伝えることが大切です。これが、完全なる見える化です。
「あなたはSでした」「あなたはAでした」と、本人にS・A・B・C・Dの5段階の最終評価しか伝えない会社が少なくありません。しかも、「Sでした」「Aでした」といっても、そのボックスの中で一番低い評価点と一番高い評価点とでは15点の開きがあるわけです。これでは1点の重みがありません。
評価制度の持つ意味合いは、査定ツールとしてしか使わないのか、人材育成ツールやマネジメントツールとしても活用するのかによって変わってきます。大手企業は査定ツールとしても活用するかによって変わってきます。大手企業は査定ツールとしてしか使っていないから、いろいろな矛盾をはらむのです。表面的には人材育成ツールやマネジメントツールらしく見せかけていても、結局は査定ツールにしかなっていません。被評価者が、5段階のS・A・B・C・Dのどこに入ったか分かればよいのです。
私には、「評価制度は、人材育成ツールであり、マネジメントツールでもある」という持論があります。評価制度を見える化しない限り、人材は育たないし、社員の本当のやる気も引き出せないと思っています。
自分が目標を達成した時に、処遇がどうなるのか分からずに働いているのと、はっきり分かって働いているのとでは、どちらがやる気が起こるでしょうか。それは、いうまでもなく後者です。
評価制度のPDCAサイクルが健全に回ることを前提として、目標を明確に設定し、目標を達成したときの処遇も明示すること、見える化することが重要なのです。それができているのが、社員を大切にする会社です。
評価体系を見える化することは、公正に評価して処遇するという社員との約束です。
働いてもらううえでの合意であり、契約です。
「そんな契約とか物々しいことをいわず、同じ釜の飯を食っているのだから一緒に頑張ればいいではないか」という発想を持っている経営者はアウトです。
「頑張った人には報いるからさあ…」と、何の裏付けもなく口頭で説得しても、本当に優秀な人は採用できません。評価と報酬の基準を明文化する必要があります。明文化すると逃げられなくなるので、いやがる経営者もいます。明文化は経営者の決意の証です。
実は、明文化してマネジメントが機能しはじめれば、経営者も楽になるのです。中小企業の経営者は、社員一人ひとりと査定面談などをしていますが、それはやはりしんどいことです。評価と報酬との基準が整備され、公正に運用されれば、経営者が自ら査定面談をする必要がなくなります。絶対に楽になります。
次回は4月10日(月)更新予定です。
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