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第8回 消費税率引上げに伴う印紙税及び源泉所得税への影響
4月1日を迎え、いよいよ消費税率が8%となった。
一部駆け込み需要の動きが見られたものの、税率引上げ前に大きな混乱はなかったように思われる。
4月1日をまたぐ取引や経過措置の適用の有無など、本コラムでは主に課税資産の譲渡等にかかる適用税率について述べてきたが、今回は税率引上げに伴う印紙税及び源泉所得税への影響について解説する。
【ポイント1】 消費税額の改定のみの契約書でも印紙が必要
既存の請負契約等につき、契約金額(税抜金額)に変更はないものの消費税率の引上げに伴い、消費税額だけを変更する契約書を作成する場合がある。
これらの原契約が印紙税法に規定する第1号文書【不動産の譲渡等に関する契約書】又は第2号文書【請負に関する契約書】である場合には、これら原契約の消費税額の変更に関する契約書は「契約金額の記載のない第1号文書」又は「契約金額の記載のない第2号文書」に該当することとなり、200円の印紙が必要となる。
契約金額(税抜金額)自体には変更がないため、消費税額の変更に関する契約書が印紙税の課税文書にあたらないとする考えもあるようだ。
しかし、消費税額の変更に関する契約書は「重要な事項(契約金額)と密接に関連する事項の変更」を定めたものであるため、印紙税の課税文書に該当することになる。
ただし、消費税額の変更金額の差額が1万円未満であれば印紙税は課されないため、すべての変更契約書に印紙が必要となるわけでもないだろう。
差額の確認もきちんと行い、必要のないものにまで印紙の貼付を行うことがないようご注意いただきたい。
【ポイント2】 現物給与にかかる源泉徴収の対象となる金額は増加する
国税庁が3月に公表した「消費税法等の施行に伴う源泉所得税の取扱いについて(法令解釈通達)」では、給与等の支給を物品で行った場合は次のように取扱うこととされている。
この取扱い自体は税率引上げ前と何ら変わることなく、事業者が役員や従業員に対して現物給与を支給するために物品等を購入した場合には、仮払消費税を認識することなく、その物品等の税込購入金額が給与の金額となる。
そのため、税率引上げ前と税抜金額が同じ物品を購入し、給与として支給した場合には4月1日以降は8%の税込金額が給与となる。
その結果、税率引上げ前に比べて給与の金額が増加することになり、源泉徴収税額も増えることが考えられる。
税務調査では、福利厚生費等として処理した物品やサービスの購入費用が給与として認定され、源泉徴収漏れを指摘されるケースも少なくない。
消費税率引上げによって引上げ前よりも源泉徴収税額が増加することも想定される。1人当たりの増加額は少額であっても大人数となれば大きな負担となることもあり、連動して延滞税や加算税も増加することになる。
なお、報酬・料金等にかかる源泉徴収は、請求書等において税抜金額と消費税額が明確に区分されている場合には税抜金額を対象として差し支えないこととされているため、例えば毎月の報酬金額につき、税抜金額に変更がなければ源泉徴収税額も変更はない。
明確に区分されていない場合には、あくまでも税込金額が対象となるため、消費税率引上げにより税込金額が増加する場合には源泉徴収税額も増加することになる。
次回は5月13日(火)更新予定です。
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