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第5回 日系が海外通販で負ける理由
成長市場である通販ビジネスと海外ビジネスを専門とする船井総研唯一のグループから、通販ビジネスの現場情報をご紹介します。
■海外の通販ECマーケット規模
しっかりした統計資料がないのですが、我々が現地情報とヒアリングを元に計算した数字によると、中国16兆円強、タイ600~700億円強、マレーシア&ベトナムはそれぞれ300億円強というのが現状です。
中国以外は少ない感じもするかもしれませんが、成長率200~300%くらいあるのであっという間に大きく成長していきます。
通販ECマーケットは、海外企業からすると投資と成長性から考えると狙いやすく、有望なマーケットなのですが、日系企業は、まったくといっていいほどうまくいっていません。実は通販ECに限らず、店舗販売でも同様の傾向にあり、欧米系&韓国系におされています。
■その中で影が薄い日系企業の現状
私が海外ビジネスでの現地企業様との交渉&コンサルティングをさせていただいている限り、飲食店は台湾系が強く、コスメ&アパレルは欧米系&韓国系が強い印象があります。
携帯は、どこでも同じですが、アップルとサムスン。
車関係は比較的検討されていますが、中国では多くのメーカーの内の1社にすぎず、シェアをとれているとはいいにくいのが現状です。
■なぜ、日系企業は海外でまけるのか。
理由はいくつかありますが、今回は「商品」についてお伝えしようと思います。
我々でも多い相談の一つは、「日本で売っている商品をそのまま売りたい」というものです。
内容をお聞きすると日本で販売実績があり、商品力は確かにあり、いいものであることは間違いないのです。
しかし、問題は二つあります。
一つは、海外では企業・商品ブランドが認知されていないことが多く、まったくの無名商品として販売していかなければならないこと。
もう一つは、現地の売れ筋価格とあっていないことが大きな問題です。
特にブランドが認知されていないということは、現地ローカルの価格の安い商品と比較されてしまうので、まず、手にとってもらうこと&知ってもらうことが必要です。
そのためには巨額のプロモーションコストが必要になります。
欧米系のブランド企業の戦略の一つはブランド戦略であり、毎年巨額の投資がされています。そのかわり価格の高い、高所得者向けともいれる販売戦略をとっています。
日系企業はそこまでやっている企業はごく一部です。
また、価格ですが、日本の商品をそのまま売ろうとするならば、通常、日本販売価格の1.5倍くらいの売価設定が必要になります。
輸送コスト、関税コストなどを加味するとそれくらいになってしまうのです。
現地の通常価格と比較した場合、商品品質&機能を比較する前から、手に届かない価格になっているのです。
もっと厳しい言い方をかえれば、その価格に見合った差別要素がなく、価値がないともいえます。
このように自社のブランドへの認識&投資不足と商品売価の大きなミスマッチがおきて、販売不振に陥るというのが日系企業の負けパターンの王道なのです。
次回以降、二つの問題を解決しながら海外ビジネスで勝っていくポイントを伝えしたいと思います。
次回は12月2日(月)更新予定です。
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