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第27回 来期営業強化を考えるために…どういう営業をすべきか?(営業の方向性)
3月決算の企業では来期の営業戦略や営業強化の検討を、その他の企業では4月以降にむけて営業戦略や施策の見直しを進められているころでしょう。
今回は、4月以降の営業強化や見直しを考えるためのご参考になるお話をしましょう。
≪営業の方向性とは?≫
営業計画を考えるためには下記順番で考えなくてはなりません。
1.営業の方向性
2.営業戦略
3.営業戦術や体制
この『営業の方向性』とは、「どのような営業をすべきか?」ということです。
これは、「何を」「どのように」理解させ売っていくのか?という営業の前提です。
わかりやすく言うと・・・
『ご案内営業(商品案内型営業)』
・・・営業が「商品の機能や強み」を「説明して」
顧客がその商品に対する課題と必要性を考え理解し売る営業
『御用聞き営業』
・・・顧客が課題と必要性を考え、
営業がそれを聞いてきて「解決策(商品)」を「説明して」理解させ売る営業
『課題解決型営業(提案営業)』
・・・営業が「顧客の課題と解決策」を「自ら」または「顧客と一緒に考え」
理解させ売る営業
つまり、上記のどの営業に向け営業戦略を進めていくのかということが『営業の方向性』です。
「どのような営業をすべきなのか?(営業の方向性)」を考え、「それを実現するための戦略」を考え、そして、「その戦略を実践するための戦術や体制」を考えるこの順番で営業を考えなければなりません。
ほとんどの企業でこの『営業の方向性』やその実現について考えずに『営業戦略』や『営業戦術や体制』を検討している・・・
その結果、一生懸命戦略を考えても、チャネルを確保しても、体制を見直しても現場や実際の営業活動が伴わずに実践できない・・・
≪営業の方向性を考える方法≫
この『営業の方向性』は二つの軸で考えなければなりません。
1つめの軸はターゲット顧客の検討状況
『営業の方向性』を考えるためには顧客の検討状況を二つに分けて考えます。
【1】課題と対策(購入商品の機能や用途)と購入計画が明確
・すでに課題と対策が明確で具体的に検討している
【2】課題または対策または購入計画が不明確
・課題や対策を気づいている、また考えているがまだ漠然としている
・課題や対策に気づいていない
・購入計画が確定していない
2つ目の軸は競合との優劣
【3】競合に対する優位性が明確
・多くの競合商品に対し、価格や機能ふくめすべて勝っている
【4】競合に対する差別化が困難、または優位性が明確でない
・多くの競合商品に対し、部分的に勝ち、部分的に負けている
・多くの競合商品に対し、差別化が明確でない
※多くの競合商品に対し、すべて負けている・・・これは営業強化の前に商品力強化の問題
この2つの軸から『営業の方向性』を考え、顧客に対し「何を」「どのように」理解させる営業を考えなくてはなりません。
多くのターゲット顧客の検討状況が【1】で、競合との優劣が【3】の場合は・・・『ご案内営業(商品案内型営業)』または『御用聞き営業』
この営業をチャネルや営業社員によって、どれだけ多くの顧客へ実践するか、どれだけ顧客に対し頻度を高く行うかを戦略や戦術に落としていく
多くのターゲット顧客の検討状況が【2】または競合との優劣が【4】の場合は
・・・『課題解決型営業(提案営業)』
この場合は、まず前述した「顧客の課題と解決策」はどのようなものかを考えそしてどのようにしたら「自ら」または「一緒に考え」理解させられるのかを考えてから、その営業を実践するためのチャネルや営業社員の強化、販促施策を考えて戦略、戦術や体制へと落とし込んでいきます。
顧客を取り巻く環境の変化が早く、戦略や計画が複雑化している今日、自社の課題を明確に理解し、的確な対策を考えられる顧客がどれだけいるでしょうか?
また、競合が多く、技術力・機能力・価格力競争が激しい今日、競合に対し明確に優位な強みを持っている商品がどれだけあるでしょうか?
このような市場環境の中で営業戦略や計画、営業強化を考えるためには、「顧客の課題と解決策」はどのようなものかを考え
そしてどのようにしたら「自ら」または「一緒に考え」理解させられるのかを考えてからそれを実現するための戦略や体制や営業社員個々の強化を考えなくてはならないのです。
そもそも、
顧客に対し、「何を」「どのように」理解させ売っていくのか?ということが間違えている、ずれている、明確でないという状況で
チャネルや行動量、体制を強化したり見直しても売上を上げることは難しいでしょう。
売れない営業のやり方では、いくら量や回数を増やしても売れないのです。
次回は3月5日(水)の更新予定です。