第1回 笑顔で気働き!

はじめまして、古川豊、と申します。株式会社NIコンサルティングで、アライアンスコーディネーターをやってます。
アライアンスコーディネーターとは
「複数の企業と企業、人と企業、人と人を結びつけることによって、新しい価値を生み出す、企業間クロスカップリングとでも言うべき、価値協創モデルの構築を行う人」
という意味で、自分で勝手に作りました(笑)
自ら作り出した以上は、その分野で日本最強であることは当然のこと、その分野そのものの価値、社会的認知度を高めていくことを、ミッションとして、取り組んでいきたいと思っております。本コラムでは、日常の仕事の中での小さな気づき、大きな発見を、思いつくままに、紹介していきたいと思います。
どうぞ、よろしくお願いいたします。

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私の出身地石川県に日本一の温泉旅館がある。和倉温泉加賀屋。「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で31年連続日本一になっているので日本一の温泉旅館と言っても差し支えないだろう。この加賀屋の接客における基本方針が「笑顔で気働き!」先代女将の小田孝前会長が、加賀屋流おもてなしの心(サービス全般を定義した言葉)として日本一となった今日もなお、輝きを失わず実践されている。

気働き。
辞書によると「事のなりゆきに応じて即座に心の働くこと」「気の利くこと」「気転」となっている。気配り、と置き換えてもよさそうなものだが、どうやら微妙にニュアンスが違うものらしい。

気働きは、もともと「江戸しぐさ」から発生した言葉。「江戸しぐさ」と言えば 全てが当意即妙、臨機応変の瞬間芸であり、思いと同時に行為が発生する思いやりの速球プレゼント。
私自身は、子供のころ、仏壇を掃除していた祖母から「ろうそく取ってきて」と言われ、言われたとおりにろうそくを取ってきたら「ついでにマッチも持ってきてくれればいいのに、、、」と言われ、くそばばあ、という感情とともに、気働きの存在を知った。
今風にいえば、依頼者の目的(何の為にろうそくを取ってきてと言ったのか)を正しく理解した上で依頼内容以上の価値をつけて提供する技。ということになるだろうか。昨今、ごく身近なビジネス環境において(もちろん私自身も含めて)この気働き不在による誤解、不信感、非効率が増えているように感じている。

ご承知のように、ビジネスを取り巻く環境は、ますます厳しさを増し、企業にはそれに対抗するシクミの構築が求められている。
その手段(解決策)の中で、注目を集めているのが「経営効率を高めるための組織内分業」。ご存知「神の見えざる手」で有名なアダムスミスが国富論で唱えたのが最初とされているが、組織全体が機能するための仕事の分担とそれを統括する仕組みのこと。さまざまなメリットが存在するが、ここでは省略する。
何が言いたいかというと、現代社会においてこの組織内分業を、潤滑油として円滑に運用・成功させる為のキーワードが、この「気働き!」ではないか?ということ。

気働きの発動には「依頼された目的を正確に把握する」という前提がある。
きっとこの人はこういう目的で依頼しているのだろう、という「気持ちの先読み」である。この「読み」が外れるとかなり悲惨なことになる。
曰く「大きなお世話」曰く「余計なことしやがって」曰く「一体何考えてんだ」等々。気持ちを先読みする為には、先読みする相手の「考え方」や「行動」、その「判断基準」を常日頃から正しく理解している必要があり、その為には、当然、自分自身の「考え方」「行動」「判断基準」も相手に」正しく理解されてないと成り立たない。
つまり、相互の理解、相互の信頼があって初めて相互に作用する、という至極当然のメカニズムがそこには存在する。

前述のように気働きはもともと江戸時代に生まれた文化。江戸時代と言えば、士農工商に代表される階級社会であり、思想、哲学、生活環境が、機能的にグルーピングされていた。
従って、異種階級が同じ目的で交流する機会がほとんどなく、相互理解や信頼関係が成立しやすい環境だったということは言えるだろう。翻って現代社会は、価値観の多様化により、そもそも、他人の考え方を理解すること自体がとても困難になっている。

未来を予測するために最も有効なのは過去の情報(蓄積されたデータ)に基づく分析。
そして、人の考え方、それに基づいた行動を予測する為に最も有効なのは、その人間の過去の判断基準の蓄積を参照すること(決して難しいことではない)。
つまり、「こんなことを言ったらこう反応した」という情報が蓄積されたモノが、その人の考え方、行動予測の基礎になる。
そう考えれば、決して、気働き!が発動しにくい環境と言うなかれ。
現代には(逆に江戸時代には存在しなかった)行動履歴を正確に蓄積し次回の行動予測につなげるためのICTの仕組みが存在する。

顧客創造日報シリーズ(株式会NIIコンサルティング Webサイト)

現に、加賀屋のデータベースには個人ごとの膨大な情報が蓄積されており、これを接客に生かしている。とのこと。つまり、過去の情報の蓄積なしには存在しないのが、現代の気働き!なのだ。

過去の情報を参照して「相手に対する優しい思いやり」と「細かいことに気を使う注意力」と「とっさに取るべき態度を決める頭の回転」を徹底的に鍛える。若手社員に「おまえ、もっと気を働かせろ!」と言ったところ「私にはそんなことよりTOEICで800点取ることの方が余程重要なんです」と反論されるこのご時世(笑)そんな時代でも、あえて、気働き!による接客を組織的に発動し、顧客満足度を高めている日本一の温泉旅館、加賀屋の企業姿勢に痺れるような感動を覚えるのだ。

あらためて、さあ、今こそ、「笑顔で気働き!」

次回は2012年1月13日更新予定です。

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この記事の著者

株式会社NIコンサルティング ビジネス企画推進部 部長

古川 豊

慶応義塾大学理工学部卒業後、専門商社のSI部門でシステムエンジニアとして、数々の基幹システム構築/運用に関わる。2000年よりパートナー営業として国内初の国産企業ポータルパッケージ拡販に従事。2005年NIコンサルティング入社。中堅・中小企業の営業改革・IT導入に携わるとともに、パートナー企業とのお互いの強みを活かした数々の「価値協創ビジネスモデル」を構築。今日に至る。石川県白山市出身。
twitter: @yutakafurukawa
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