第89回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その24~「製造業は二毛作」保守部品事業を考える Part1

「製造業は二毛作」と何度か述べています。製品で儲ける、そして、保守部品で儲ける。ところが保守部品で儲けることができない企業を多く預かります。その原因と解決策を数度に分けて述べてみたいと思います。Part1として混沌の認識から始めましょう。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その24~「製造業は二毛作」保守部品事業を考える Part1

今年の花粉は気合が入っています!テラスに置いてあるホッピーの茶瓶に黄色い粉が……
よーく洗って3冷ホッピーです。

「製造業は二毛作」を実現できない製造業に成らない為に

製品の粗利益には興味がある経営者は多いのですが、保守部品のそれにはあまり興味が無いケースを多く見ます。
一応、売価=部品(ユニット)原価×〇〇%という掟は決めてあるものの、保守部品事業に関わる間接経費、特に人件費には無頓着な経営者がほとんどでした。「どれだけ間接工数が費やされているかご存知ですか?」という質問にも経営者の???という反応は良く見る光景です。

何度も述べている様に保守(部品)事業は本来、大変儲かる事業なのです。
ただし、儲ける為の2つのキーワードは「早く届ける」「正しい部品を届ける」です。

1:早く届ける

これは、当然ですね。何らかの理由で御社製品に不具合がある訳で、一刻も早い不具合解消が求められます。「えーと。これから部品を発注しますから1ヶ月は掛かります」などと回答したら御社の機械は1ヶ月以上不様な状態を晒し続けることになりますし、CSの側面からも最悪の状態です。

流用化・標準化設計によって類似部品を減らし、「標準部品在庫でこの課題に対応して行きましょう」という私の提言にはどの経営者も素直に理解を示して頂けることは確かです。これは将来に向かっての改善・改革事項ですから、BOMを構築しての流用化・標準化設計へのモチベーションとして大変重要なテーマとなっていきます。将来へ向けての重要な改革テーマです。

2:正しい部品を届ける

これは1項とは真逆のテーマです。過去への対応、つまり既存の製品に対する対応策となります。御社の成長の証として市場に存在する製品を如何に保守していくのかということです。まさに「保守」です。5年10年というスパンでは留まらず30年前の製品にもその対応が迫られる場合もあるでしょう。それ故、「正しい部品を届ける」事の難しさがここには存在するのです。
過去の製品情報の乱雑な状況や精度不良。さらに最悪の場合はそれらの遺失がさらにその難しさに輪を掛けるからです。

正しい部品を届ける為に起きているケースを分類し、考えてみましょう。

ケース1:お客様から「品目コード指定」で部品・ユニット注文がくる

これは、理想的な状況であり、この状態を目指してBOM構築を進める訳ですが、既にこの領域に達している中小・中堅製造業も存在することは認めざるを得ません。この状態にある製造業の方で、このコラムを読んでいらっしゃる方はこれ以降の本コラムは時間の無駄使いになると思われます……お仕事にお戻りください(笑)

ケース1には程遠く、お客様から実際にあった部品(ユニット)の発注のケースをそれぞれ並べてみましょう。

ケース2:お客様から写真が送られ該当部品に矢印がついて「この部品欲しい」という発注

最近は写真のメール添付様様ですね。一昔前はFAXという手段で解像度劣悪、何が写っているか全く不明という処から始まり、何度となく再送を繰り返してようやく、該当部品が判明。この段階で既にお客様は「いい加減にしろ!」状態であることは想像に難くないですね。ようやく写真に写っている部品の確定はできそうです。

ケース3:お客様から担当営業A君に電話があり、以下のようなやり取りをする

お客様
「10年前に納めてもらったAという製品のBユニットの右下にあるシャフト欲しいのだけど、わかる?」

A君は
「私がお世話に成った初めての製品ですから分かります!」
「じゃ、宜しく!」とお客様。

というような会話です。
私はそばで聞いていて「A君ほんとに分かったの?」と営業に確認するとA君は「たぶん……」
「たぶんか~」とは私のつぶやきです。

しかし、ここからが保守部門の難儀がスタートです。
ケース2の場合は判明したと思われる写真を基にその部品の該当図面探しが始まります。
ケース3の場合はもっと悲惨で担当営業のA君から保守部門窓口にメールで「X社に10年前に納めたAという製品のBユニットの右下にあるシャフトです。わからなければ設計担当に確認してください」という「丸投げ」発注です。

「この部品って、どの部品?」からスタートの保守業務

ケース2はこんな顛末でした……
保守窓口担当はまずは保守部門で一番年長のスタッフAさんに写真を見せます。このスタッフAさんは長年生産部門に居たので、「製品の生き字引」と呼ばれています。私の独り言は「生き字引が死んだらどうするんだ??」

Aさん「この製品はたくさんバージョンがあって、写真だけじゃー解らないなー。お客様にどのバーションか確認してくれる?」さすが生き字引だけのことはあって良く知っているなーと感心。(感心している場合ではないのだが……)

保守窓口はお客様にそのまま「どのバーションでしょうか?」と確認メールを疑いもなく送付。
お客様から「そんなの解るか!」とご立腹返信メール。このメールのやり取りだけでも、もうCSもへったくれもあったものじゃありません。

困った保守窓口は保守部門責任者に相談。
保守部門責任者「しょうがないから技術に該当しそうな部品全て洗い出してもらって」となります。
やっぱり、技術に余計な仕事が回ってきてしまいました。

ケース3はもっと深刻です。
保守窓口担当から転送された営業A君のメールが保守部門Bさんに届きました。
保守部門のBさんは営業A君からのメール読んで舌打ち……
「ったく、いい加減だな、相変わらず営業のA君は。こんなの担当設計しかわかる訳ないじゃないか」
ということで即刻このメールが技術部門転送になるのです。
これまた、技術に余計な仕事が回ってきてしまいました。

こうやってどんどん設計部門に「この部品って、どの部品」仕事が舞い込んでくるのです。
あの超多忙な設計部門にです。
さらに「発注するから早く図面見つけて、価格は?納期は?」と畳み込んできます。

御社の場合は如何でしょうか?このケースに該当していませんか?

それでも、とにかく技術部門に依頼したから何とかなるということになるのでしょうが、実はこれから技術部門では「この部品って、どの部品」仕事にまつわる想像を絶する格闘?が始まるのです。
その想像を絶する格闘とは……

次回に回したいと思います。

次回は5月17日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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