第4回 設計部門の活動

前回は流用化・標準化設計を実現し、設計部門の効率を上げることでメタボになった設計部門を少数精鋭化して、設計部門の人材流動性を確保するという提案でした。

今回からは、いよいよ流用化・標準化設計実践に向けてのアプローチとしての考え方を、私の実体験(と言いますとカッコイイですが要は滑った、転んだ、の顛末です)を織り交ぜて話題を進めていきます。

流用化・標準化設計の目指すイメージはレゴブロック設計ですから、設計資産として自社に存在するレゴブロックを確認できる仕組みが必須です。そして、設計資産がすべてブロックとして流用できる訳ではないので、それらの峻別も必要に成ります。

まずは図面の整理から・・・とは言っても、設計資産の代表格である図面類は、私がエンジニアをやっていたころの原図室に塩漬けになっているトレペ図面から、現役設計者が昨日書いたCADのファイルに在る図面まで、メカ、エレキ、ソフトの系統を考えると、いともたやすくその枚数は「万」のオーダーになるでしょう。私の体験では、その時点で既に、その数に怯えて流用化・標準化設計の諦めを始めてしまう事例を沢山見てきました。

「この凄い量、一体誰がやるの?私に任されても忙しくてできないよ・・・」

そんな感じです。ここは流用化・標準化設計に向けて、設計部長の不退転の決意を試される重要な局面です。個人任せにしないで、まさにこの作業を設計部門全体の活動として、部長が力強く推進する必要が有るのです。

私はその推進の原動力として「設計部門の5S活動」を勧めています。「設計部門の5S」と言ったとたん多くの設計部長は怪訝そうな顔をします。

「5Sって生産部門の活動でしょ?」

確かに生産部門(下流側)でキッチリ活動している会社は多く見受けますし、経営者自ら「我が社の5S活動は順調で基本の2S(整理整頓)は自慢です」と、ピカピカの工場の床を指してアピールされる方も多いのですが、その様な会社のほとんどの設計資産の状況はと言えば、2Sとは程遠い状態でした。言ってしまえば「ゴチャゴチャ」なのです。

設計資産が目に見えないことを良いことに経営者の気づきはなく、この設計資産形成にどれ程莫大な費用を掛けたのかも忘れ、ゴチャゴチャのままなのです。気づきのある経営者は、この見えない設計資産をいち早く「可視化」しようとします。可視化は2Sの原動力ですから可視化できればマネジメント可能になるという発想は明快です。

ですから、いきなり5Sでなく、まずは2Sからでも構いませんから活動を開始することです。一刻も早く「設計資産全体の可視化を実現することです!」

そして、その活動の肝は

ここまで到達すれば、2S活動は成就したと言えるでしょう。勿論、この2Sを支える仕組みとして今時ITの活用は必須ですが、2Sの肝は、「発想の転換や可視化を実現する設計ルールの設定」という考え方や、行動の変革にあることは理解して頂けたのではないでしょうか。

効果は具体的に現れ始め、流用化も少しずつ可能になり、探す・見つける時間、似て非なる図面等、無駄な設計情報の作成時間も減ってくると思います。流用化設計の夜明けとでも言いましょうか、設計者自身が「楽になってきた」と実感できる様になります。これは大きな前進です。標準化設計に向けてのアプローチの完成とも言えます。

さて5-2=3で残りの3S(清掃・清潔・躾)に移りましょう。
「清掃・清潔」はITを駆使して可視化できた設計資産から、陳腐化した資産を廃棄したり、分類情報や属性情報に磨きを掛けたりして、いわゆる設計資産(今や情報)のメンテナンスをきっちり実行していくことです。最後に残る「躾」、これはとても大切かつ難しいテーマです。

私が流用化・標準化設計を何度となく失敗した原因は、今思うと、この「躾」の部分にありました。この「設計者の心や意識」に関わるマネジメントの失敗でした。私自身、苦悶しながら体得した重要なテーマです。

その体験談は4月のコラムにまわしたいと思います。
桜の花は如何ばかりでしょうか・・・

注)5S活動・・・5Sに基づいた業務管理を5S管理・5S活動などと呼ぶ。
整理(せいり、Seiri):いらないものを捨てる
整頓(せいとん、Seiton):決められた物を決められた場所に置き、いつでも取り出せる状態にしておく
清掃(せいそう、Seisou):常に掃除をして、職場を清潔に保つ
清潔(せいけつ、Seiketsu):3S(上の整理・整頓・清掃)を維持する
躾(しつけ、Shitsuke):決められたルール・手順を正しく守る習慣をつける

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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