第149回 財務諸表から見た収支改善 その4

前回は経費の中でも、材料費を中心とした変動費削減について記述しました。今回は固定費について記述します。固定費は、収益などに影響されない一定の費用のことを指します。利益を増やすために非常に効果的な固定費の削減についてお話ししたいと思います。

財務諸表から見た収支改善 その4

前回は経費の中でも、材料費を中心とした変動費削減について記述しました。今回は固定費について記述します。経費の中の固定費は、収益や患者数などに影響されない一定の費用のことを指します。固定費の代表的な科目は人件費です。

2024年度の診療報酬改定では、「医療機関に働く職員の給与を上げる財源としなさい」というベースアップ評価料という新しい診療点数が出現しました。現在の経済的な状況を鑑みると医療や介護の業界の給与水準は決して高いものではありません(職種にもよります)。しかし、収益に対する給与費の割合は約50%と他の業界に比べて比較的高い割合を占めています。

この要因は医師など一部の職種の給与が高いためですが、事務職員をはじめとする多くの職員の給与水準は決して高くはありません。今回の改定でベースアップ評価料が新設された背景としてはコロナの対応が大変だったなどの要因もありますが、一般的に他業界よりも医療業界は給与水準が低いため、その水準を引き上げ、人材確保などをしたいとする政策のようです。

固定費を削減することは、利益を増やすためには非常に効果的です。収益に影響のある患者数などに影響されずに経費が削減でき、そのおかげで利益が増えることになるからです。しかし固定費という経費は、変動費に比べて削減しにくい経費でもあります。特に人件費は、職員の働く原動力のようなものでもありますので、仮に給与が下がることがあれば、働く意欲が失われることも考えられるからです。

人件費を中心とした経費削減策

1. 人事評価制度の見直し

通常、賞与の支給の際に対象者に対して、SABCD評価などが行われます。評価は公正、公平に行われるべきですが、評価する側の好き嫌いなどで評価が行われている医療機関もあります。

経費削減とは別観点にはなりますが、このような評価は行われるべきではありません。事前に評価される項目や、評価方法(仕事の質や量など)を決め、評価する側と評価される側で面談し、双方納得しておくことが重要です。さらに評価者による評価の甘い・厳しいなどの(特に部署間の)ブレを極力小さくするために、賞与評価時期の前に(部署間の目合わせ的な)評価者研修を行う医療機関もあります。

2. 手当などの見直し

医療機関にはさまざまな手当があります。さらにその手当も長い間見直されていない手当もあります。手当の支給基準や金額、現在では必要ない手当などを定期的に見直すことが必要です。また手当は、削減するだけではなく支給基準を明確化することで、収益を上げるモチベーションにつながることもあります。

3. 福利厚生、教育・研修制度の見直し

福利厚生費も固定費です。職員全員のための福利厚生ですが、福利厚生の内容を見てみると、「一部の職員しか利用しない」「利用頻度が少ない」「利用が困難」など、無駄な経費と思われる福利厚生の内容も含まれていることがあります。職員の慰労のための「職員忘年会」などもありますが、そもそも飲み会などに魅力を感じない、出席したくない職員も多くなってきています。本来の職員全員のための福利厚生という観点に立ち返り、また、今の時代に合う福利厚生を考えることをお勧めします。

固定費の削減、あきらめては何も始まらない

医療機関は、さまざまな専門職種の集まりです。専門的な知識の習得や勉強、研修などは必要不可欠です。しかし、「同じ書籍を複数冊購入している」「外部研修会に複数人参加している」などのケースはよくあります。書籍であれば回覧すればよいことですし、研修会には代表者1人が参加し、その参加者がほかの職員に対し研修会の内容を伝えれば経費も削減可能です。今までの慣習的な内容をあらためて見直す時期に来ているのではないでしょうか。

固定費は削減できればその効果は大きいですが、変動費に比べてなかなか削減することは難しいです。しかし、削減が難しいからといってあきらめては何も始まりませんので、細かな内容も含めてコツコツ削減額を積み重ねていきましょう。

皆さんはどう思いますか?

次回は6月12日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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