第72回 「未来投資戦略2017」介護関連編

2017年6月9日、「未来投資戦略2017」が、閣議決定され公表されました。5つの戦略分野が指定されていますが、介護を重要な改革ターゲットと位置付けています。そこで今回のコラムでは、「未来投資戦略2017」の「介護」に関連することを取り上げたいと思います。

「未来投資戦略2017」介護関連編

2017年6月9日、「未来投資戦略2017」が、閣議決定され公表されました。皆さんは、もう読まれましたか? もし、まだ読まれていないのであれば、ぜひご一読をお勧めします。

参考Webサイト
首相官邸 政策会議 日本経済再生本部
「未来投資戦略2017-Society 5.0の実現に向けた改革」が閣議決定されました(平成29年6月9日)
未来投資戦略2017(全体版)

2013年以来、日本の成長戦略は「日本再興戦略」という名称で公表されてきましたが、今回の2017年版では「未来投資戦略2017」と改められて、「Society 5.0の実現に向けた改革」との副題が付けられました。この「未来投資戦略2017」には、5つの戦略分野が指定されています。

5つの戦略分野は、

  1. 健康寿命の延伸
  2. 移動革命の実現
  3. サプライチェーンの次世代化
  4. 快適なインフラ・まちづくり
  5. FinTech

です。
いずれも非常に興味深い戦略テーマですが、今後の高齢化やニーズの拡大を念頭に、双方で介護を重要な改革ターゲットと位置付けて、戦略分野も決定されています。

そこで今回のコラムでは、「未来投資戦略2017」の「介護」に関連することを取り上げたいと思います。

出典:内閣府 平成29年第10回経済財政諮問会議・第10回未来投資会議合同会議
資料7「未来投資戦略2017 Society 5.0の実現に向けた改革」P.13(PDF形式:3,272KB)
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2017/0609/shiryo_07.pdf

「未来投資戦略2017」の介護関連記述概要

  • 技術革新を最大限活用し、個人・患者本位で、最適な健康管理と診療、自立支援に軸足を置いた介護など、新しい健康・医療・介護システムを構築する。オールジャパンでのデータ利活用基盤を構築し、個人の状態に合った効果の高いサービス提供による、健康寿命の延伸と高齢者の自立した生活を実現するとしています。
    具体的なシステムとしては、最適な健康管理・診療・ケアを個人・患者本位で提供するための基盤として、「全国保健医療情報ネットワーク」を整備し、このネットワークをもとに、国民自らの生涯にわたる医療等の情報を本人が把握できるPHR(Personal Health Record)を構築することを目指すとしています。このネットワークは、2020年度からの本格稼働を計画しています。
  • AI、ロボットなども組み合わせて現場の生産性を上げながら、高齢化・人口減少下でも質が高く、効率的な健康・ 医療・介護のサービス提供を可能とするモデルを構築するとしています。
    AIに関しては、画像診断支援、医薬品開発、手術支援、ゲノム医療、診断・治療支援、介護・認知症を重点6領域と定めて、開発や実用化を促進すると記述されています。
  • 費用対効果も勘案しつつ、基盤構築・制度改革・民間投資促進を一体的に進め、2020年には、新しいシステム「全国保健医療情報ネットワーク」を構築し、国民が安心できる医療・介護が2025年に国民生活に定着していることを目指します。課題解決モデルを早期に作り上げ、グローバル市場の獲得と国際貢献を目指します。
  • 遠隔診療について、例えばオンライン診察を組み合わせた生活習慣病患者への効果的な指導・管理や、血圧・血糖の遠隔モニタリングを活用した早期の重症化予防など、対面診療と遠隔診療を適切に組み合わせることにより効果的・効率的な医療の提供に資するものについては、次期診療報酬改定で評価を行います。安倍首相も同様の趣旨の発言を行ったことから、2018年度の診療報酬改定において、遠隔診療に関しての何らかの診療点数が新設されることは間違いないようです。この遠隔医療については、来年度の改定だけで評価するのではなく、今後さらに有効性・安全性などに関する知見を集積し、2020年度以降の改定でも反映させていくとしています。
  • 次期介護報酬改定において、効果のある自立支援について評価を行う。どのような状態に対してどのような支援をすれば自立につながるか明らかにし、自立支援などの効果が科学的に裏付けられた介護を実現するため、必要なデータを収集・分析するためのデータベースを構築する(既述)としています。本年度中にケアの分類法などのデータ収集様式を作成し、来年度中にデータベースの構築を開始する予定です。

参考:科学的介護
出典:首相官邸 政策会議 未来投資会議構造改革徹底推進会合
「健康・医療・介護」会合(第1回) 配布資料 資料4「厚生労働省・経済産業省 提出資料」P.4(PDF形式:1,961KB)

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/health/dai1/siryou4.pdf

  • データ分析による科学的な効果が裏付けられた介護サービスについては、2021年度以降の介護報酬改定で評価するとともに、そうしたサービスが受けられる事業所を厚生労働省のウェブサイトなどで公表し、国民に対する「見える化」を進める予定です。効果が裏付けられ、結果を出した事業所に利用者を誘導する政策です。単なる「実施した」、「人を整備した」だけでは今後介護報酬は得られないということです。
  • 介護現場でのロボット・センサーなどの活用については、効果実証を着実に進め、その結果を踏まえて、利用者の生活の質の維持・向上と介護者の負担軽減に資するものについて、次期介護報酬改定の際に、介護報酬や人員・設備基準の見直しなどの制度上の対応を行うとしています。ロボット介護機器の開発重点分野について再検証を行い、本年夏までに戦略的な開発の方向性を取りまとめ、来年度以降の新たな開発支援対象に反映させる予定です。開発企業にとって大きなビジネスチャンスですが、重要なことは、介護を提供する現場で、価値のあるものにしなければいけないということです。開発に関して、積極的な介護現場の関与を期待します。
  • 介護職員の負担軽減のため、行政が求める帳票などの文書量の半減に向けて取り組むとともに、介護記録のICT化について普及を促す取り組みを強化するとしています。AIを活用したケアプランの作成支援についても、実用化に向けた課題の整理などの取り組みを支援する予定です。前回の介護報酬改定においても、介護職員の負担軽減策はありましたが、あまり効果は出ていません。金銭的な側面だけではなく、多方面から負担軽減措置を行うということです。
  • 高齢になっても自分らしく生きることのできる「生涯現役社会」を実現するために、医療・介護関係者や大学、民間事業者、地方公共団体などの多様な主体の連携のもと、高齢者の居場所や役割、仕事を創出し、要介護状態になることを予防し、進行を抑制するとしています。例えば、「仕事付き高齢者向け住宅(仮称)」などについて実証事業を実施し、認知症や要介護状態の予防・進行抑制に向けて、医学的・科学的に効果が認められるモデルケースの構築を進めるとしています。

医療政策も同様ですが、介護についても多くの政策で、「予防」の強化がポイントです。予防を強化することで、介護されるまでの時間が延長され、健康寿命が延びるということになります。もちろん予防を強化することで、医療費も同じですが、介護報酬の伸びを抑制したいという目的もあります。

いずれにしても、国の目的がどこにあろうが、事業所の経営の舵とりは、国の政策の示す方向に沿って進むこと、政策を先取りすることが利益の最大化に繋がることは間違いありません。

皆さんは、どう思いますか?

次回は12月13日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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