大阪大学サイバーメディアセンター 岩居 弘樹

2020年12月18日公開分のTeacher's CLIPの番組サマリーをお届けします。

今週のTeacher's CLIPも、Zoomを使った収録でお送りしています。

番組サマリー

子供から大人まで。ICTを活用した幅広い年代での外国語学習

大阪大学サイバーメディアセンターの「言語教育支援研究部門」というセクションで働いています。主なミッションは大学の外国語教育に対するICT支援。CALL教室の管理運営や貸し出し用iPadの管理、「ロイロノート・スクール」などのオンラインツールの管理運用、さまざまなオンラインツールの調査研究を行っています。

数年前からは、大阪大学の留学生にも手伝ってもらいながら、小学校向けのオンライン複言語学習を実施しています。子供たちはインドネシア語やロシア語、ペルシャ語、韓国語などを学び、あいさつや自己紹介ができるレベルになっています。また、小さな子供から大人までを対象とした市民講座「複言語学習のススメ」も年に数回開催しています。

オンラインを活用した複言語学習

教育貢献部門で「大阪大学賞」受賞に至った理由とは?

大学ではコロナ対策のために2020年4月からの授業をオンラインで実施することになりました。しかし、ほとんどの教員はオンライン授業など経験したことがありません。そこで、これまで私が取り組んできた「ICTを利用した外国語教育」の実践研究と「Zoom」を利用してきた経験をまとめることにしました。

困っている先生たちにいち早く情報を届けるため「Zoom+α」というWebページを制作。3月中旬に公開しました。そして、学外の方でも参加できる「Zoom」を使ったオンライン授業のための相談会をスタート。この取り組みが大学からも評価され、教育貢献部門で「大阪大学賞」を受賞することができました。

実践的なオンライン授業のノウハウを公開している「Zoom+α」

「Zoom+α」 では、「Zoom」の使い方はもちろん「ロイロノート・スクール」などのオンラインツールの使い方も紹介しています。学生とコミュニケーションをとったり、資料をリアルタイムで配布したり、提出物を集めてコメントする方法などを分かりやすく解説しています。

オンライン相談会では、実際に「Zoom」を使って参加者にホストになってもらいます。「ブレイクアウトセッション」の機能やオンラインツールを使ったやりとりを教師として体験。オンライン授業でやりたいことが実現できるかどうかを、手を動かしながら確かめることができます。

相談会で見えてきた「オンライン授業が抱える三つの課題」

音声で回答するオンラインテスト

対面授業をしながら同時にオンラインでも配信する「ハイフレックス」と呼ばれる授業方式があります。密を避けるために教室に入る学生を制限し、オンラインでも授業に参加できるという方法です。一見良いアイデアに映りますが、先生一人で目の前の学生とオンラインの学生の両方をケアできるかというと疑問が残ります。

学生側の受講環境の問題もあります。1時間目は対面授業だけれど、2時間目はオンライン授業という場合、学内のどこかでオンライン授業を受けることになります。周りの学生が静かに学習している部屋で、オンライン授業を受けている学生が一人だけ声を出して発音練習をするのは難しいでしょう。

そして最も大きな課題が試験のやり方です。対面授業と同じスタイルの試験をオンラインでやろうとすれば、カンニングなどの不正が起こりかねません。これを物理的に防ぐことは不可能です。音声やビデオで回答させるオンラインテストのような新しいスタイルの試験が必要になってきます。

新しい世界を生きるには経験者と話すのが一番の近道

残念ながらもうコロナ以前の世界に戻ることはできません。覚悟を決めて、新しい世界で生きる準備をしないと同じ失敗を繰り返すことになります。でも、一人では不安ですしどこから手をつけたらよいか分からないですよね。そういうときは経験者に話を聞いてもらうのが一番です。

たくさんの先生方の実践事例が紹介されているYouTubeチャンネル「iTeachers TV」もきっと参考になるはずです。また「Zoom+α 相談会」は2020年3月からこれまで275回開催し、世界各地からのべ3,500人を超える方に参加いただきました。オンライン授業のこと、ICTの活用で困ったことがあったらぜひお越しください。

番組視聴はこちらから

GUEST PROFILE

岩居 弘樹(いわい ひろき)

大阪大学サイバーメディアセンター

大阪大学サイバーメディアセンター教授。携帯端末・タブレット端末やWebサービスを活用したドイツ語学習の実践研究のほか、看護系大学での「複言語学習のすすめ」、留学生と小学生をつなぐ「世界のことばプロジェクト」などを実施。遠隔授業支援のためのWebページ”Zoom+α”を運用し+α相談会も開催中。ADE 2013。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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